道は開ける

 昔、母が度々話していたのだが、「本州から四国に渡るとき、以前は当然連絡船に乗っていたが、瀬戸内海は小さい島が多くて、遠くから見ていると、このまま進んでいったら行き止まりになるかと心配していると、近づいてみたら島と島との間にちゃんと水路があって、いつも無事に通りすぎることができた。世の中のこともあまり早くから先のことを心配していると、どうにもこうにもならないような気がするものだが、いざ、そのときになってしまえば多少の勇気と知恵があれば、何とか道は開けるものだ」という。母の体験によるちょっと印象的な話である。

 確かに誰の人生にも、いろんな場面で行き止まりを感じるときがある。そのようなとき、私たちは不安にかられて、焦ったり、苛立ったり、悩んだり、絶望したりする。このままゆけば、全くどうにもならないと結論を急いで、自ら人生を絶つ場合もありえよう。だが、遠くからその「事柄」を考えて恐れるばかりでなく、あえて勇気をもって迎え待つ思いで、具体的にその事態に直面するならば、何らかの解決を見出すことができるだろう。その結果がこれまでの価値観に反するものであったとしても、人間として生き続けることの大事さには、まこと変わりない。

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