死ぬほど退屈なうち

 息子が中学生の頃「うちは死ぬほど退屈だ」と文句を言った。「なぜ?」と聞くと「どこのうちでも、いろいろドラマがあるのに、うちはいつ帰って来てもいつも同じ顔をしている」という。それを聞いて私は「もし、本当に君のいう通りだったら、お父さんはチャップリンぐらいの名演技者だネ」と答えた。仕事や日常生活をしている中で、多くのストレスを感じることは、いくらでもあるが、それを家族、とくに子どもに気づかせてはならないと自戒してきた。自分自身のさまざまな体験がトラウマとなって、自分の子どもに対するせめてもの配慮として、家庭内のトラブルにより緊張状態になることを、絶対避けたいと願ってきたことが、息子には死ぬほど退屈な日々だったらしい。

 「君のいうドラマってどういうこと?」と尋ねると「親父が酔っ払って帰るとか、いろいろと変化があることサ」とのこと。その息子も中年になり、家庭を持ち、時折、親もとに顔を出すが、ほとんど家庭内のトラブルを語ったことがない。配慮しなければならない子どもはまだ授かっていないが、息子も私と同様名演技者なのかどうか。ともかく日毎の生活の中で感じることの多いストレスをどのように解消するか、これも重要な生きてゆく知恵と思う。

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