突然死のこと

 先年、東京の新名所お台場の大観覧車に案内してくれた甥が自分は乗ろうとしないので「どうした?」と聞くと「一番高い所でボルトが外れたり、ヘリコプターがぶつかってきたりしたらどうなるか」というから「マァ、そんな場合は大体墜落死だろうね」と答えると「死ぬことを覚悟してまで乗る物ではない」との返事に「なるほど」と半分は納得した。でも以前、好きなスポーツをしながら、突然亡くなった若い方の例をあげるまでもなく、ごく稀であるとしても、生きている人間であるかぎり誰でも死が予告なく訪れることを避けることは、当然できない。それが戦争や事件、交通事故とかの社会的原因によることであれば、絶対あってはならないこととして、反対と防止に極力努めなければならないが、半ば自然現象のように無作為に発生する事態に対しては、人間の智恵や能力を越えた大きな自然の領域に属することとして、ただ畏れとおののきをもって従うほかはない。このことを「一寸先は闇」と恐れるか「一寸先は光」と復活の主を心から寄り頼むかは、私たちに与えられた信仰の選択による。

 ともあれ、一寸先を恐れて大観覧車に乗らない彼を残し、勇気ある老人たちはお台場の夜景を十分に楽しんだ。

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