共通の知人の女性牧師の紹介で、私は妻と結婚した。早くから家を出て働いていた彼女は、紹介された当時、ある視覚障害者たちが集まってマッサージをしている施設で働いていた。その春、夜間高校を卒業し、福祉関係の大学に行って、そうした方向の仕事に就く準備をしていたという。そこに思いがけず縁談が来たのだから、彼女自身もおどろいたに違いない。でも存外アッサリと先方がよいというなら承知するつもりだったとか。その先方の私の方も、しっかり者の母親にゲタを預けていたから地方都市に住む彼女に会ってきた話を聞くと「ま、結構でしょう」と答えた。当人同士は、基本的にキリスト者であることを根拠に、ずいぶん簡単に結論を出していたが、周囲の者たちはそうはいかなかったらしい。
後で聞いた話だが、妻の長兄は反対して「わざわざ障害者と結婚するなんて、困った変り者の妹だ」と嘆いたそうだ。しかし、その長兄も私たちの子どもが無事に育っているのを知ってか、紹介した女性牧師をひそかにもてなし感謝したことを伝え聞いた。そこで私も時に調子に乗って妻にのたもうている。「どこの福祉大学よりも中村福祉大学に来たこつは、よか子を授かったけん、君にとっても、ほんに祝福でよかったばい」。