リップ・サービス

 公教育は一日も受けなくても、常識程度の知識は得ているから一応の市民生活を送ることに不都合はない。けれども、利害得失の思いの少ない純真な心の少年・青年期に共に学び遊ぶ学校生活がなかったのだから、その時期の友人がいないことは、やはり、私の人生にとって本当に残念なことだったと率直に述べた。するとある人から「現実の学校にはそんなロマンチックなものは、もうどこにもない。ないものねだりだ」という意味のことを言われた。私の気持に配慮するリップ・サービスかとも思った。が、最近よく聞く校内トラブルと思い合わせて、寒々しい思いがした。

 昔の寮歌にある「友の憂いに我は泣き、友の歓喜に我は舞う」式の気分は、遠い過去のものであることぐらいは私にも容易に想像できる。しかし、たとえ現実社会の厳しさが、そんな甘い期待や友情を許さないとしても、私たちが人間として生きているただ中に率直・純粋に交わり語り合う場が時にあってもいいのではないか、と心中ひそかに熱く願い続けて来た私なのだ。思えば、ひとりの救い主に従い、ひとつのみ言葉を求め合う教会のキリストを中心にした交わりこそが、いま現実に与えられている真実の友情の世界であると覚えて、あらためて喜び感謝したい。

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