「人類絶滅原因究明中」

 かなり以前、動機不明の「恐竜ブーム」が起こった頃、恐竜絶滅の原因についての珍説を聞いた。即ち母恐竜の子育て放棄説である。本来の雌恐竜が良妻賢母型であったか否か、浅学の知るところではないが、かつてこの地球上に二億年ほど前に棲息した恐竜の劇的な絶滅の原因については、従来多くの説が主張されてきた。巨大隕石衝突生存条件激変説、恐竜人口(?)過剰食糧不足説、排泄物推積環境破壊説、種族対立激化防衛力増強自滅説等々。大体これらの説の背景には、その時々の社会的関心があり、前記の珍説は男女雇用機会均等法に危機感を覚える者の説である。これらの恐竜絶滅の原因はすべて人類絶滅の原因にもなりうる。いやむしろ彼ら恐竜より、短絡的にいえば、加速度的に絶滅への道を急いでいる。「核兵器」という究極の破壊兵器(そして原発)を手にしながら、それをコントロールする知恵を持たない人類の未来が恐竜の運命とは異なると誰がいえるか。空疎な世界観、無意味な偏見・差別、目先の利害得失等が、自分自身の存在を危険に陥れている自己矛盾。人類絶滅後の新しい生物世界の博物館に陳列される人類の骨片の説明書に記される文字、「彼らは自分たちの生存条件の向上・確保には異常に熱心だったが、絶滅の直接原因は目下究明中である」。

タイトルとURLをコピーしました