頭のうち・そと

 私は年をとって、銀髪の人に対してはちょっと羨ましく思う。ロマンスグレーは恰好よ
いが、ロマンスツルリでは、とてもさまにならない。晩年、かなりな禿頭だった母方の叔
父に似てきたことを、ひそかに悲観していた私だが、最近、叔父の生涯を改めて振り返り
、頭の外側はともかく、その内側は似た者になりたいと思うようになってきた。

 大手企業の部長で定年退職し、妻を亡くして一人になると、郷里の九州の地で、学生時
代から国際理解と平和に役立つと信じ学んでいたエスペラントの普及・教育に努め、東京
で始めていたユネスコ運動も再開した。当初は全く理解・賛同者がおらず、集会のために
借りた公民館の一室で、ポツンと参加者を待ち続け、夕方一人で帰って行くのを妹は偶然
よく見たという。しかし、やがて時代とともに増えた参加者に心から喜んだ叔父だったの
はいうまでもない。しかしまた、その集りがいつか地方都市の(本質から離れ、良心的人
々の)社交場化するものを感じると、すぐに責任者の立場を辞した。継続を望む多くの人
々の声を決して聞かない頑固さには、周囲の方は当惑されたと思うが、その潔さを私は敬
愛する。別の叔父が国から勲二等何とか賞を受けたと親戚筋が騒いでいたが、私はこの叔
父こそ勲一等と思っている。(母の新婚旅行に同行した弟)

タイトルとURLをコピーしました