指紋押捺拒否運動の中で

 指紋押捺拒否運動が盛り上がっていた頃、地域の運動の例会の会場として私たちの教会の一室が使われていた。ある夜の集会の終り近く、Rという台湾系中国人の男性が突然大声で叫んだ。「いくら言っても、日本人には俺たちのこんな悔しくて辛い気持ち、分からないヨ!」。赤く興奮した顔を見ているうちに、私も興奮して叫んでいた。「そうだ。分らない!分らないからこそ少しでも分ろうと思って、ここに来て、話し合っているんじゃないか」。その場の雰囲気が一瞬、白けて気まずくなったことは、憶えているがそれからどうなったかは記憶にない。ただその後しばらく経って彼が私のことを「イイ人ね」と評したことを間接的に聞いて、複雑な気持になった。私は隣人として単純に自分の思いを言っただけなのだが、彼もまた、それを単純に率直に聞いて受けとめてくれたのかと思うと本当にうれしい。近現代史において、私たちの国が彼らの国々、人々に与えた人的、物的被害は限りなく大きかった。その結果として、そこに生きていた人々の悲しみ、苦しみ、悩みはどんなに深かったことか。このことを心から謝罪し、二度と同じ過ちを犯さないことを神の前に誓った「戦争責任告白」に連帯する私たちは、東アジアの平和と安定を築くために「平和憲法九条」を護り続けている。

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