ここにもクリスマス

 私が洗礼を受けたばかりの五〇年ぐらい前のクリスマスか何かの集まりで聞いた話です。当時はいまと違って、まだまだ国中が貧しく、多くの人々にとって生活していくのが、とっても大変な時代でした。順がまわってきて、お年をとられた教会員の小柄なひとりのご婦人が立ってポツポツとこんなお話をされました。「私は戦争で夫を亡くし、子どもが何人もいて、生活のためにさまざまな仕事をして暮らしてきましたので、一時期、礼拝にも思うように出席できないときがありました。そんな頃のことでしょうか。年末も迫ったある寒い夜、子どもたちと部屋一杯にものを広げて内職をしていました。すると、玄関口に身なりを整えた顔見知りの近所の奥さんが来られて、『お宅はクリスチャンでしょう。だから、今夜は何かされると思って来たのです』とのこと。内職に追われて、今夜がクリスマスイヴであることをすっかり忘れてしまっていたことは、本当に申し訳ないことですが、なんの準備もないことをお詫びして、近所の奥さんにはお帰りいただきました。そしてこんどは大声でクリスマスの讃美歌をみんなで歌い出しました。すると、ここにも神の子・イエスが来てくださっているのだと思い、嬉しく感謝したことでした」。

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