霊界との取り引き

 カルト集団の霊感商法が話題になってからすでに久しい。現実に起こっているできごとの原因を、自分の前世や先祖の祟りによると説き、その解消は高価な商品を求めることによってできるという。私も身体障害者になった原因を、こう説明されたことがある「昔、あなたの先祖が久留米の在にある藤山村の庄屋であったとき、村に出てきた白蛇を殺したり、通りがかった行者を村民がいじめたりした祟りが、いま、あなたに現われている」と。これを話した人は、霊感商人ではなかったらしく高価な商品を押しつけはしなかったが、聞かされた方は批判的ながらも、不穏な気分になった。

 まったく説明も証明もできない前世の世界のできごとを根拠に、現実の世界のできごとを説くこと自体、完全にまやかしであり、ましてそれによって宗教的意味づけをして壷や数珠など(遠くは免罪札もあった)を売る行為は、信仰心をもてあそぶ最も罪深い犯罪行為である。人はあまりに不条理で過酷な状況に遭遇すると、「なぜ、どうして?」と激しく深く問う思いを持つものだが、それに対する答えはどこにもない。だから、私の身体障害者になった原因も、幼時期に偶然ポリオにかかった高熱による事実だけである。この偶然を、冷静に受入れることのできる強い魂を求めなければならない。

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